イ・ブル展では「秘密を共有するもの」というタイトルの作品を「私からあなたへ、私たちだけに」という展示のサブタイトルと同じ名前のセクションでみることができる。この作品は、今回の展示の為に制作した新作だ。にもかかわらず、フライヤーをみても森美術館のHPをみても、この作品について言及されているページは無い。(イ・ブル展を紹介する他の情報サイトでは作品の画像とともにこの作品について言及しているところはある。)4つのセクション「つかの間の存在」、「人間を越えて」「ユートピアと幻想風景」、「私からあなたへ、私たちだけに」はイ・ブルのキャリアをなぞるように作品をみることになるため、どのようにイ・ブルの作品が変化していったのかを体感することができる。
六本木ヒルズの情報を届けるエリアマガジン『HILLS LIFE』で「アートとエンターテイメントの違いは何でしょうか?」というインタビュアーの問いに対して、イ・ブルは「アートとエンターテイメントは重なる部分があって、線引きは難しいですね。ただ、エンターテイメントは他人がなにを望んでいるのかを見せるものであり、アートは自分自身がなにを望んでいるのかを見せるものではないかと思います。」と回答していた。イ・ブル(私)から展示を見た人(あなた)は「何か」を受け取り、「何か」を共有することで「私たち」となる。展示を見終わって「私からあなたへ、私たちだけに」という言葉を思い返すと、スッと胸に響く。宣伝材料として「秘密を共有するもの」を使用しなかったことにイ・ブルの意志を感じた。
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