2012/03/14

影が織り成す世界 /すべてのモノに存在する意味と距離【文=小川真玄】


影は物体と光との関係により発生するもの。
影の中は意味が存在し影を通して私たちに語りかける。
それらのエレメントが存在することで私たちに影の世界というものを創造させるのではないだろうか。

ここで一つの絵を紹介したい。



□キリコ (ジョルジョ・デ・キリコ 1888-1978 イタリア)
「街の神秘と不安」(1914年 油彩)


私はこの絵から影の世界を思考する。
この絵は影が映し出す悲しみが存在していると私は思う。
それは光が強く建物の外壁を照らし、また遠くへ導こうとしている「光の強さ」にあるのではないだろうか。その中には悲しみに似た要素が存在しているからだと思う。

このように空間に対する影の影響は大きいと考えられる。そこで私は空間の影に対する新たな世界を模索し、発生した世界を建築に落とし込んだ時、影という空間はどのような変化を及ぼすのか。また空間での世界とは一体どのようなことが思考できるのだろうか。

例えば庇(ひさの下の空間。
□桂離宮 新御殿


庇は内部と外部の線であり、壁でもある。それは影や庇といった建築のエレメントによって空間の仕切りをつくっているからではないだろうか。
また存在する影のあり方は壁や線といった仕切るものの他にも時間軸で空間内を侵食し、内外の関係に変化を及ぼすものでもある。

影の存在は建築のひとつのシーンを見てもとても面白い世界の変化を見せていると私は考える。
影は光と物体が存在することで世界を作り出す。
その世界は空間の仕切りの他にも、身体に及ぼす冷たさや暗さといったものを含め、影という世界には大きな魅力が存在しているのではないだろうか。