2012/03/14

近い立体 遠い立体 /日常の中から考える【文=マツモトモエコ】


私はオモチャやフィギュアが好きで気に入ったものがあれば買ったりする。
ふりかえって自分の部屋を見てみる。
オモチャといっても固定のポーズのものや固形の物とか、置いて眺めて楽しむものが多い。
そういう物のシチュエーションを自分で見立てて飾るのは楽しい。



部屋の本棚の一番上に置いたグリーンアーミーはリュックをぎゅっとにぎって、
グリーンアーミーにはめずらしくまっすぐ立っている。
このポーズのせいか置く場所によって、
逃げたか生き延びたかでやっと目的地に着いて一人山から下を見ているようだ。

いわゆる彫刻とかは見るだけで鑑賞する時は触れないものが多い。
最近は触ることを目的にしたものもあるが、
せっかく立体物だからさわってもいいのにと思うこともある。
でも逆に触れない所にあるものはどうだろう。

http://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=30&d=3

金沢21世紀美術館の建物の上にある、
ヤン・ファーブルの「雲を測る男」(制作年:1999)という作品。
全身金ぴかの男が高い所でさらに4、5段くらいの脚立にのっていっぱいに腕をのばし長い定規をもちあげている。

そこまで上がってその低さの脚立にのる意味あるのか?と思いながら、
それでも雲に少しでも近づいて測ろうとしているのだと思うとなんともいえない気持ちになる。
前向きに少しでも近づいて測ろうとしているのに、
それでも雲をはかるという自力ではできないことをやろうとしている行為が、
実現の難しい夢に向かう態度なのか、
それとも空想にひたって現実を見ていないということなのか、
いろいろ考えることができるなと思う。

ヤン・ファーブルのこの「雲をはかる男」のようなシチュエーション、
場所や空間のなかで見る人に想像させるような見せ方は、
見る人が大きいスケールに引き込まれ作品のイメージを膨らませることができる。


作品にもよるだろうけど、どんな所に置いてあるのかは制作者の意図がある。
ここに置いたらこう感じる、とかこれと組み合わせたらこんなシチュエーションになるなぁとか。
作品解説を読めば情報としてはいろいろ知ることはできるけど、
場所やポーズから読み解いていくことはとてもおもしろい。

(1 シチュエーション)